まち カド ま ぞ く pixiv。 #8 bloom(前編)

まちカドまぞく 5巻を完全無料で読める?zip・rar・漫画村の代役発見!?

まち カド ま ぞ く pixiv

いやしい情欲。 「~をそそる」 「はぁ…」 うんざりするような暑さの残る9月の夕暮れ。 かなかな、というセミの声を聴きながら私は自室のソファーである気持ちと戦っていた。 何かと戦うことは過去によくあったけれど、正直今まで経験した多くの戦いよりもずっと難しい。 その攻撃にはあまりに抗いがたく、気が付くと私の心をどんどん蝕んでゆく。 …大げさなことを並べたな。 「ううぅ…」 うんうん唸る私が悩んでいること。 それは…やっぱりシャミ子のことだ。 私が彼女のことを好きなことは間違いない。 かわいらしくて頑張り屋で、ほっとけなくて、優しくて…最近は気が付けばシャミ子のことばかり考えている。 そのことは特に今さら否定はしない。 …しかし、新たな問題が発生している。 最近、シャミ子が妙に色っぽくてよこしまな欲求が頭をもたげてくることだ。 ある日のこと。 「あっ、桃!こんにちは」 「こんにちは」 その日はいつものように放課後、シャミ子たちのいるD組に向かった。 クラスに特に親しい友人はいないので放課後のこの時間は私にとって学校での数少ない楽しみになっている。 みんなには言わないけど。 シャミ子を見ると何やら「んー!」と明らかにアピールしている様子。 そういえば唇のところがいつもより艶やかなような? 「今日は唇きれいだね」 「あ!さすがに鈍感な桃でも気づいてくれましたね。 ミカンさんと杏里ちゃんと小倉さんに教えてもらってリップをつけてみました!どうですか?どうですか?」 「うん、いいと思うよ」 「やった!」 これで私も大人まぞくに一歩近づきました、と上機嫌のシャミ子。 鈍感は余計、と軽口を叩きあう。 ………。 あんなにも美味しそうな唇をこうまでアピールされるとは…。 その何の穢れも知らなそうなひとひらの果実を己の唇で思いきり蹂躙してやりたい。 どんな顔をするのだろう。 どんな声を出すのだろう。 きっと可愛いだろうな。 いつもの顔の裏でそんなことを考えてモンモンとしながらシャミ子たちと家路についた。 またある日。 お昼休みにD組に顔を出すと、シャミ子がミカンに髪を梳かしてもらっていた。 長い茶髪がミカンの手によって整えられていく。 「シャミ子は癖っ毛だけど、ちゃんとストレートにしてみたらどうかしら?きっともっと可愛いと思うわ」 「そ、そうでしょうか?」 「ええ、私が保証する!」 「ミカンさんがそう言うならそうしてみようかな…」 気持ちよさそうに椅子に寄りかかり、髪をいじられているシャミ子。 足を弱めにぱたぱたと揺らして、ご機嫌な様子。 ………。 あの髪、すごく触れたい。 さらさらというよりはふわふわしていて、触り心地が抜群で…。 きっと普段シャミ子から香る匂いよりもっと深く甘い香りがするに違いない。 今はミカンに触られているけど、私が触れたらどんな顔をするんだろう。 あんな魅力的な髪を好き放題弄っているミカンが心の底から羨ましい。 仄暗い嫉妬心すら芽生えてくる。 あんまり心が闇に傾くとまずいので必死になって気持ちを押し殺す。 この時私はさぞかし怖い顔をしていたに違いない。 そしてまたある日。 「今日はここまで。 お疲れ様」 「はぁ、はぁーっ…やり切りました」 「うん、よく頑張ったね」 その日は危機管理フォームでどれだけ体の出力を出せるかの調査。 その流れで始まった筋トレに熱がこもり、だいぶん長いことトレーニングしていた。 3倍に薄めたスポドリを飲ませて、シャミ子を休ませる。 なんだかんだだんだんと出来ることが増えてきて教える側としても楽しくなってきた。 …それはいいのだけど。 「暑いです…」 シャミ子の危機管理フォーム。 町中でこんな格好をしている人がいたら思わず二度見するような強烈な露出が特徴の変身フォームだ。 言わずもがな、この格好は非常に刺激が強い。 やはりその中でも気になるのは…その隠しきれていない豊満な胸。 いつも目にしているものの、どうしてもちらちら見てしまう。 どうしたらあんなに大きくなるのだろう。 触ったらきっと指が沈み込むように柔らかくて…最早後戻りなんて出来なくなってしまうだろう。 ごくり、と唾を飲む。 「ふぅ…」 汗をかいて蒸れたのか胸の部分の布を少しぱたぱたしている。 お、おばかっ、見えちゃう! そんな具合で最近はふとした瞬間のシャミ子に目を奪われてよこしまな欲求が頭をもたげてくることが何度もある。 ふたりきりの時など、本当に危なかった。 私の中の欲望が、私という存在を劣情に狂った獣に変えてしまいそうだ。 もはやこの気持ちをぶつけてしまいたいと思ったこともあるけど…そんなことをしたらシャミ子に気持ち悪がられて、嫌われてしまうだろう。 そんなことになったら本当に立ち直れなくなりそうで。 モンモンとした気持ちを少しでも晴らそうと走りに行こうかと思い、ウェアを取りにいこうとすると、ドアがノックされる音。 「桃~?いますか?」 「シャミ子」 ドアを開けると、私のよこしまな精神を捕まえて離してくれないまぞくの少女が立っていた。 何か用事でもあるのだろうか。 「どうしたの」 「…特に用事はないんですけど何となく話したくて。 ほ、ほら!桃の部屋には扇風機もありますし」 「? とりあえず、入って」 「お邪魔します!」 中に入るとシャミ子はスタスタと扇風機の前に歩いていきそのままそこに陣取った。 私も暑いんだけど…まあ嬉しそうだしいいか。 ソファーに腰掛けるとシャミ子がこちらを向き、お喋りが始まった。 家であったこと、町で見つけた新しいお店のこと、つぶやいたーで見かけた話題…。 ハキハキと話すシャミ子に私が相槌を打つ。 実に楽しそうにしているシャミ子に顔がほころぶ。 とても楽しくて幸せなひと時だ。 ………。 恨めしい。 こんな時でさえ頭をもたげてくる、よこしまな感情。 ニコニコとこちらに微笑む時に緩む美味しそうな唇。 ふわりと匂ってくるあの甘美な香り。 涼しげで可愛らしい肩出しワンピースの胸元を扇風機の風でぱたぱたとさせ、「暑いですねえ」なんて言っている。 その柔肌は私という獣の浅ましい視線に晒される。 「桃?どうかしたんですか?」 「んっ!?」 いきなりシャミ子が距離を詰めて私の顔を覗き込んでくる。 劣情に濁った表情が変に見えたのだろうか。 じっと見つめてくるシャミ子の瞳から目を逸らせない。 心臓が激しく高鳴る。 今まで経験したどんな戦いよりも。 「暑いですし体調かんりー!に気を付けないといけませんよ、なんちゃって」 そう言ってシャミ子は熱を測ろうとしてくれたのか自分のおでこと私のおでこをくっつけた。 目前に迫るあの唇。 今なら。 もう、限界だった。 「シャミ子!」 「ひゃっ」 シャミ子の手を引き、ソファーに引き寄せ、そのまま強く深く抱きしめる。 小さくて柔らかいその体の感触が伝わってきて、全身の毛が逆立つよう。 そのまま目を閉じ、有無を言わさず唇を奪った。 「んっ…」 シャミ子の口から悩ましげな息が漏れる。 柔らかくて…熱い、もう離れられない。 口づけている間、熱く激しく沸き立っている私の脳にはそのくらいのことしか考えられなかった。 愛おしくてたまらない。 その感触に、匂いにどんどんと溺れていく…。 しばらくして唇を離す。 はあ、はあ、と肩で息をしているシャミ子。 それを見ているとはっと息を飲んで自分のしでかしたことに気づく。 ついにやってしまった…。 こんな…こんなことをしてしまって、さぞ嫌われたことだろう。 涙が出そうになって、視界がぼやけてくる。 せめて謝らなければ。 顔を上げてシャミ子を見る。 「えっ…」 すると息を整えたシャミ子は怯えるでも怒るでもなく穏やかな笑みを浮かべている。 その様子にあっけにとられていたが、我に返った。 謝らないと。 「シャミ子…ごめん。 気持ち悪かったよね」 「いいえ、大丈夫ですよ」 「でも…」 「うーん、そうですね…じゃあどうしてキスしたんですか?」 「それは……言わなきゃダメ?」 「ダメです!逆に言わないと許しません!」 その言葉の割には妙に楽しそうなシャミ子。 でもこう言われてしまっては白状するしかない。 「…最近シャミ子がすごく魅力的で、我慢できなくて、それで」 私が消え入るような声で言うと、シャミ子はにんまりといった表情を浮かべた。 ずっとどうしたらいいか悩んでいたのに。 このまぞくはニヤニヤと笑って勝ち誇っている。 なんだ、シャミ子が仕掛けたんじゃないか。 私のせいだけじゃない。 そんなことを思うと、私の心にあった後ろめたい想いで燃えていた暗い色の炎は、一気に鮮やかな激情の色に姿を変えた。 「そうなんだ、そういうことするんだ」 「あれ?もも?」 シャミ子の腕をまた掴んでソファーに寝かせ、逃げられないように下半身の上に跨る。 特に抵抗はされなかった。 彼女の右手を握りしめ、言質を取る。 「もう止まれないから。 責任は取ってもらうよ。 この誘い受けすけべまぞく」 「……受け止めちゃります」 するとシャミ子は私の頬に左手を当て、にっこり微笑んだ。 やっぱりこういうことして欲しかったんじゃないか、へんたいまぞくめ。 そして、私はシャミ子に覆いかぶさった。 そのまま唇めがけてキスの雨を降らす。 少し目を開けると、さすがに余裕なさそうな表情が見えた。 見たか、すけべまぞく。 「んぅ…」 「はぁ、はっ、はっ」 さっきよりも一段と激しいキスにさすがに息が苦しそう。 でも、私の方も気遣ってあげられる余裕がない。 熱くて甘い舌の感触も、ぎゅっと握られた手も、押し付けられる体の感触も、ぜんぶわたしのものだ。 一種の征服感を感じながら唇を離すと、私はシャミ子のワンピースに手をかけた。 一瞬手を押さえられたがどうぞ、という感じで目を閉じ、身を委ねてきた。 どこまですけべなんだ、もう。 この服を開いた先に、ある。 私がずっと待ち望んだその瞬間が。 震える手でこじ開けようとしたその瞬間。 びくっと玄関の方を振り返ると、ミカンが来たこと、今この状況を見られると非常にまずいこと…様々なことが一瞬のうちに頭を駆けめぐる。 あれほど燃え盛っていた心は一瞬のうちに消火されてしまった。 まずは今眼下でおろおろとしているシャミ子を何とかしなければ。 「シャミ子、一旦お風呂に隠れて」 「え、でも」 「いいから」 「は、はい!」 シャミ子の服を整えさせ、風呂場に身を隠させる。 私自身も何事もなかったかのように玄関へ向かう。 「あら、桃。 遅かったじゃない」 「ごめん。 何?」 「また実家からオレンジが届いたからおすそ分けを…ってどうしたの?」 「いや…ありがとう」 そんなことのために…おすそ分けはありがたいけどタイミングが悪すぎる。 でもあまり顔に出しすぎると何かあったと思われるので平静を装ってダンボールを受け取る。 「あなたもちゃんと柑橘類摂ったほうがいいわよ、それじゃあ!」 「うん、おやすみ」 反対側のミカンの部屋のドアが閉まったことを確認して、ゆっくりと自分の部屋に戻る。 …なんかいけないことをしているみたいだ。 実際そうなんだけど。 風呂場に行くと、まだシャミ子はおろおろとしていた。 顔を真っ赤にしてのぼせている。 「シャミ子」 「も、ももっ」 「大丈夫だから」 「は、はいぃ…」 ひとまず寝かせてあげよう。 私は後ろに回り、ひょいとシャミ子を抱き上げた。 そのままソファーまで運び、寝かせる。 …角が痛いかな。 「私の膝、硬かったらごめんね」 「ふぇ!?」 ゆっくりとシャミ子の頭を浮かせ、膝に乗せる。 さすがに少し落ち着いてきたみたいだ。 でも、体が震えているのが分かる。 「怖かったよね。 本当にごめん。 私どうかしてた」 「い、いえ…私がけしかけたわけですし、桃が怖かったわけではないです、びっくりしただけで…。 それに、嫌じゃなかったです」 「…」 そういうことを言われると再燃しそうになるからやめてほしい。 「でも、こうでもしないと眷属になってくれないんじゃないかと」 「…焦らなくても大丈夫だから。 その時まで待ってるしそれに」 「え?」 少し間をおいて、言葉を続ける。 別に恥ずかしいとか決してそんなんではない。 「私はずっと君のそばにいるから」 目を見開き、こちらを見るシャミ子。 自分でも驚くくらい穏やかな表情で見つめ返した。 「…別に恥ずかしいとか決してそんなんじゃないです」 「うん」 「私の方だって逃がしません」 「うん」 「それにしても…桃にもあんな情熱的な顔があったんですね」 「うん…うん!?」 驚いて、変な声が出てしまった。 急にぶっこんでくるのはやめてほしい。 ニコニコと笑って、シャミ子は私の手を握った。 そして目を閉じ、心地よさそうな表情をしている。 …『宿敵』の前でそんな無防備でいいのかな。 もう片方の手でゆっくりと、そして優しくシャミ子の前髪をよける。 なんだろうと目を開いたが、もう遅い。 その無防備なおでこに唇を落とす。 シャミ子の表情は見えないが、きっと驚いているのだろう。 しばらくして唇を離し乱れた髪を直した後、かすれる声で囁く。 「好き」 眼下のまぞくは目を見開いてみるみるうちに顔が真っ赤になっていく。 今日一番の赤さかもしれないな。 さっきもっとすごいことしちゃったんだけどね。 でもこのまぞくは人様を誘惑する極悪非道のわるまぞくだから、このくらいは許してもらおう。 「…はい」 蚊の鳴くような声で返事をするシャミ子。 すると声にならない声を出して手で顔を覆ってそっぽを向いてしまった。 そんなシャミ子の髪を、私は勝ち誇った気持ちで撫でるのだった。 おわり.

次の

#8 bloom(前編)

まち カド ま ぞ く pixiv

先日終業式を終え、そのあと春休みを迎えた。 そして何事もなくささいな日々を過ごしていると、またあの日がやってくる。 3月25日。 この日は私、千代田桃の誕生日なんだけど、おそらく今まで一度も誰からも祝ってくれたことがなかった。 あったとしても祝われた記憶がない。 一人で過ごしてきた私にとって自分の誕生日は一つ年をとる日としか思ってなかった。 あまり気にしたことがなかった。 それどころかシャミ子やミカンなど他人の誕生日も言われるまで忘れていた。 それほど私は寂しい世界で今まで生きてきたんだなぁと思う。 いつものように朝早く起きたあと、ジャージに着がえて日課である朝フルをしに出かけた。 閑静とした住宅街を一人走り出す。 朝は肌寒いとはいえ、春らしくうららかに太陽が薄暗い空を明るく照らしていた。 吹く風も心地よい。 走ると、嫌なことも忘れることができる。 そのまま走り続けて何分か経つ。 ちょうど通りかかった公園で桜の木が咲いていた。 きれいだからちょっと寄ってみた。 ここでふとあることを思い出した。 たしか幼いころ私が4歳になる誕生日のとき、別の高台の公園で姉と一緒にお花見をしたんだっけ。 そのとき姉に誕生日を祝われて嬉しかったことを思い出す。 しかし、思い出す限りそれ一度きりしかなかった。 あれから10年以上も経って誕生日を気にしなくなってしまった。 他人の誕生日会も何度もすっぽかしてしまった。 しかもつい最近ミカンの誕生日会も忘れていた程だから。 あの頃祝われたときはすごく嬉しくて楽しいはずなのに。 どうしてそんなことを忘れてしまうんだろうか。 もしかすると、姉がいなくなり、この町を守るための戦いで心の余裕がなくなってしまったんだろうか。 そう考えると、なんだか自己嫌悪に陥ってしまう。 そんな気持ちを振り切り、桜の木をあとにしてひたすら走り続けた。 走り続けて数分後、ばんだ荘の自宅へ戻って来た。 いつも通りメタ子に餌をやり、私は一旦シャワーを浴びて汗を流した。 部屋着に着替えたあと、いつもならばシャミ子が朝ごはんを作りに来るんだけど、今日はなぜか来ておらず、テーブルに置き手紙があったのでそれを読んでみた。 『桃へ。 朝来られなくてすみません。 私は用事がありますので。 朝ごはんは冷蔵 庫に入っているものをレンジで温めて食べ てください。 シャミ子より』 どんな用事があるのだろうか。 そんなことを思いながら手紙のとおり冷蔵庫を開けてみると、シャミ子が作り置きしてくれた料理があった。 メニューはサラダと卵焼きと焼きウインナーだった。 卵焼きとウインナーをレンジで温める。 なお、自分でパンをトースターで焼き、コーヒーを淹れる湯を湯沸かし器で沸かす。 いくら料理下手な私でもこれくらい造作なくできる。 でも、いつもはこれらのことも全てシャミ子に任せているけど。 朝食を済ませたあと、暇だからテレビでもつけてみると、いつものニュースが流れてきて、特に気になることがないのでスマホでなにか適当に筋トレやたまさくらちゃんの動画を見たが、その動画はどれもすぐに見飽きてしまった。 「せっかくだから、むこうの家で筋トレでもしようかな。 暇つぶしで」 そこで少し離れた姉が残した大きな家に向かう。 ちょっとした理由でシャミ子たちが暮らすばんだ荘に越してきたが、それでもあの家に定期的に掃除をしたり、たまにそこのトレーニングルームで体を鍛えたりするために何度か戻っている。 今回は筋トレをするために行く。 着いて早速トレーニングルームにあるダンべルで鍛える。 しかし、あっという間に物足りなく感じたので、別の器具で鍛えてみる。 しかし、なぜか終えたあとにもやもやとした感覚に襲われる。 鍛えている間は特に感じなかったのに。 「…いや、このまま鍛え続ければすっきりとそんなもやもやも消えるはずだろう」 でも、さっきのメッセージアプリのやりとりを思い出す。 姉が残した家に向かう途中だ。 シャミ子からこんなメッセージが届いていた。 『ごめんなさい。 いろいろ立て込んでいるので私が呼びに来るまで私の部屋に入らないでください。 』 いったいどういうことだろうか。 朝の用事といい、シャミ子はいったい私に隠して何をしているのだろうか。 さすがに訝しんだ私は同僚の魔法少女のミカンにメッセージアプリでさっきのことをひととおり打ち、ミカンの返信を待った。 しかし、いくら待っても彼女から返信が全く来ない。 既読した様子もない。 ミカンもメッセージを読む暇がないほど忙しいのか。 彼女も何をしてるんだろうか。 同じようなことを杏里にも送ったが、彼女からも何も返事が来ない。 いったい何をしてるんだろうか。 杏里は精肉店の手伝いだと思うが、シャミ子とミカンは何をしてるんだろうか。 思えば思うほど気になってしょうがない。 そんなことを引きずってもしょうがないので、昼食を買うついでに気分転換で外へ出かけた。 朝と比べてだいぶ暖かくなってきた。 日差しもより心地よく感じる。 コンビニへ寄って何か適当におにぎりやポテト、お茶を買っていく。 ちょうど朝フルで通った桜の木がある公園へ行きたくなった。 そこで桜を見ながら昼食をとることにした。 なぜか桜を見たくなった。 着くと、そこには遊び回る子どもたちや、その保護者らがいた。 私は公園の隅のベンチで桜を見ながら買ってきたおにぎりを食べる。 子どもたちが無邪気に遊び回る光景を見ると、またしても私の幼いころを思い出す。 『ももちゃん、桜の花がいっぱい咲いててきれいだね』 『うん。 さくらもきれいだけど、おべんとうもおいしい!』 『あはは、ももちゃんは花より団子かな。 でもそのお弁当、私が頑張って作った自信作だから味わって食べてね』 そういえば、初めて花見に連れて行ってもらったとき、相当食い意地を張っていたことをまず浮かんできた。 『あのね、この桜の花言葉は精神美、純正、優美なんだって』 『はなことば?なにそれ』 『今のあなたにはまだわからないと思うけど、いずれ私と同じくらいに大きくなったらわかるわよ。 それまでにこの町を守れるくらい立派な魔法少女になるんだよ』 『うん!わたし、おねーちゃんみたいなつよいまほーしょーじょになる!ぜったいなってみせる!』 『うん、その意気だよももちゃん。 期待してるよ』 次に姉と花言葉の話しをしたことを思い出す。 当時の私は理解できなかったが、今ならその花言葉を話した意味がなんとなくわかってきた。 姉の名前も桜である。 たしかにその花言葉のとおり、姉は優しくて純正で明るい人だった。 血はつながってはいないが、私のなかで唯一家族と呼べる存在だった。 そんな姉がある日突然花びらが散ったかのようにいなくなってしまった。 それは当時まだ幼なかった私にとってあまりにも辛かった。 その後はずっと一人だった。 そんななかでたくさん苦しいことや、辛いことも経験した。 魔法少女をやめたいと思ったことも何度もあった。 今まで表向きには平静を保ってきたが、寂しくないといえば嘘になる。 今までずっと家族、姉がいなくて心細いと度々感じた。 それをずっと閉じ込めてきた。 誰にも悟られぬように。 なんだか眠くなってきた。 時間に余裕があるし、このまま座って寝ることにした。 「桃ちゃん、桃ちゃん!」 どこからか聞き覚えのある声がした。 姉の声だ。 「お姉ちゃん、どこにいるの?」 私は辺りを見渡してみると、ちょうど目の前に姉がいた。 姿を確認すると、飛び上がる程嬉しくなった。 しかし、なぜコアになっているはずの姉がここにいるのか。 夢か幻か。 今そんなことはどうでもいい。 姉に会えただけ嬉しいから。 「どうしてここに!?」 「ふふっ、それはともかくまた会えたね。 私、すごく嬉しいよ」 「うん、私もすごく嬉しい」 「それじゃあ久しぶりに桜を見よっか。 せっかくだからね」 「うん!」 私はいつの間にか姉と一緒にいるからか、かつてのように無邪気になる。 もう気持ちは舞い上がっている。 早速お話ししたい。 しかし、いざ話そうとすると話題が思いつかない。 相変わらず私は口下手だなぁとそんな自分を恨めしく感じる。 すると姉はそんな私を察してか自ら話題を出してくる。 「桜、きれいだね」 「うん」 姉の言ったことに穏やかに相づちをうった。 「ねぇ、桃ちゃんがまだ幼なかったとき、一緒に花見をしたこと、覚えてる?」 「うん、覚えてる。 さっき桜を見たときにそのことを思い出したよ」 「そうだったんだ。 覚えていてくれて嬉しいよ」 姉は優しげな笑顔で喜んでいる。 私も姉がそのことを覚えていてくれて嬉しい。 「今だから聞くけど、桃ちゃんはこの桜の花言葉の意味、わかる?」 「うん、ネットで調べてようやくわかったよ。 たしか、桜の花言葉は精神美、純正、優美な女性だよね」 「うん、それはたしかにその通りよ。 でもね、それ以外にももうひとつの意味があるの」 「もう一つの意味?」 私が頭をかしげると、姉はくすりと笑い、話しを続けた。 「うん、もうひとつは、フランスでは『私を忘れないで』という意味があるの」 私はその意味を聞いたとたん、なんだかシャミ子のことでズキッとくる。 今朝のことも含め、心が重くなる。 もしかして、シャミ子は私との「約束」を忘れてしまったのか。 シャミ子がこの町を守るボスとして活動するようになってから二人で一緒にいる時間が減ってきているように感じる。 そう思うとまた重苦しく感じてきた。 そんな私の様子を見た姉は私の両肩に手を置き、優しく語りかけてくる。 「あのね、たしかにこの一年間、桃ちゃんは優子ちゃんと出会ってから大きな出来事があったね。 それによってたくさんの出会いや発見があったね。 それらの出来事は、あの子だって忘れるはずがないと思うよ。 あの子だってあなたのために頑張っ…い…はず…」 すると、周囲の光景にノイズがかかり始める。 そのため姉の言葉がだんだん正確に聞き取れなくなったが、姉が言いたいことは理解できた。 すごく温かな気持ちになれた。 「ご……ね桃ちゃ…、あ……がもう………ろ…から…め…わ。 だ…ど、………と……く………とが…って…る………よ………」 しかし、姉がまた何か伝えようとしていたが、私の意識がだんだん覚めていくので、正確に聞き取れなかった。 そのまま視界は真っ白に染まっていく……。 「……、…も、桃!」 目を覚ますと、誰かの声が聞こえてきたので体を起こすと、そこにシャミ子が目の前にいた。 「あれ、シャミ子?」 「まったく、こんなところで寝ていたとは。 部屋に呼びに行ってもいなかったから探しましたよ、もう」 シャミ子は少し怒った様子だった。 なんで私は怒られているんだろうか。 まったく見当がつかないけど、彼女にとりあえず謝っておく。 「ごめん、心配かけて」 「まったく、メッセで部屋で待っててくださいって書いてましたよね?」 「えっ?そんなこと書いてたっけ?」 「書いてましたよ!!もう!ちゃんと見てください!!!」 シャミ子に言われてポケットからスマホを取り出し、メッセージアプリで確認してみる。 見たとき、私は頭を抱えた。 言われた通り、朝読んだメッセージのあとにそのことが書かれてあった。 メッセは普段から読むのが面倒くさいからいつも既読スルーをしたり、そこからの通知をオフにしていた。 ちなみに朝読んだ内容は暇だからむこうの家に向かいながらたまたま適当に読み漁ったときに知った。 そんな習慣が災いしてシャミ子やミカンの誕生日会をすっぽかしていた。 私にメッセでそういう重要なことを知らせないでほしい。 「さぁ、みんな待っていますから行きますよ」 「い、行くってどこに?」 「ばんだ荘に決まっているじゃないですか。 ほら、行きますよ」 「ちょ、シャミ子!?」 シャミ子は私の右腕を掴んで勢いよく歩き出した。 「シャミ子、みんな待ってるって言ってたけど、このあとばんだ荘で何をするの?」 「それは着くまでのお楽しみです」 シャミ子が私にそう言うから、いろいろ考えるが、あることに気付く。 もしかしてと思い、期待を膨らませることにした。 ばんだ荘のシャミ子の部屋に着いて上がると、突然クラッカーの音やスパンコールなどが飛び交った。 『お誕生日おめでとう桃!!!』 そしてばんだ荘に住むみんなのコールが一斉に響いた。 シャミ子をはじめミカンやリリスさん、良ちゃん、清子さん、杏里、小倉、ウガルル、リコさんに白澤店長、紅玉さんまで私の誕生日を祝ってくれた。 部屋を見渡すと、テーブルにたくさん料理が並べられ、壁に装飾品が飾られていたから、いかにも私のために準備してくれたことが伺える。 想像以上な誕生日会の光景に私は感極まって言葉が出なかった。 こんなに祝ってくれたのは初めてだ。 思わず顔が綻びていた。 「ありがとう、これ、シャミ子が企画したの?」 「はい、たしかに私もそうですが、この誕生日会はあらかじめ桃には内緒でみんなで案を出し合ったものですよ」 「そうだったんだ。 ありがとう、みんな」 その後リコさんと紅玉さんの漫才やリリスさんのカラオケなど、ほかいろいろな余興を楽しんだ。 夜がふけて暗くなったころ、みんな自分の部屋に戻る。 杏里は家が離れたところなのでミカンとウガルルに送ってもらって帰宅した。 私も自分の部屋に戻ろうとしたとき、シャミ子が唐突に声をかけてきた。 「あっ桃、これ、私からのプレゼントです」 シャミ子はそう言うと、私に一つの紙袋を差し出した。 もちろん私はそのプレゼントを受け取った。 「ありがとうシャミ子。 開けていい?」 「はい、いいですよ」 早速開けると、中にはたまさくらちゃんのキーホルダーが入っていた。 「ありがとう、大切に使わせてもらうね」 「あ、はい。 喜んでもらえて何よりです」 「あ、あの…」 そうだ、ここで伝えよう、あのお願いを。 一つ深呼吸をおいて、シャミ子に伝える。 「私とシャミ子二人きりで明日、お花見に行かない?昼間に私が行った公園に」 シャミ子は少しきょとんとしている様子だった。 私のわがままであることはわかっている。 みんなと一緒にいるのももちろん楽しいけど、シャミ子と二人きりの時間も欲しかった。 だめなら仕方ないが… 「いいですよ、もちろん。 た、ただ一緒にいたい…とか、そういうことでは…なくて、宿敵としての敵情視察だ!」 意外にもシャミ子は照れながらも快諾してくれた。 相変わらず素直じゃないけど、しっぽは嬉しげなようだ。 ひとまず私は胸をなでおろす。 もうこの時点で顔を綻ばせているだろう。 とにかく明日の天気が晴れますように。

次の

【朗報】『まちカドまぞく』連載再開! 作者の体調不良“自律神経失調症”で昨年より休載

まち カド ま ぞ く pixiv

Contents• 鳴神学園オカルト研究部2をクリアしていたら連休が終わりました =============== まちカドまぞくは1巻より2巻の方が5倍面白いし、2巻より3巻の方が10倍面白いし、3巻より4巻の方が8倍シャミ桃だし、4巻より5巻の方が3倍シャミ桃だし、全ては読み返すたび3倍面白い 個人の感想です =============== 「まちカドまぞくアニメ面白い」 「明日もう一度来てください。 本物のまちカドまぞくの面白さを教えてあげますよ」 「こ、これは… 原作3巻まで読了。 山岡はん、あんたなんちゅうもんを読ませてくれたんや… 尊いなんてもんやない… 涙が止まらん」 「まだ4巻と5巻もあります。 ゆっくり味わって下さい」 =============== 『まちカドまぞく 5巻』は無料の漫画村や、zip、rarで全ページ読むことはできるの? 『まちカドまぞく 5巻』を完全無料で読む方法! と、言われましても、一体どうやって完全無料で読むのか、いまいちイメージできませんよね……。 そこで、もしかしたら、 「 漫画村」や「 zip」「 rar」といった違法サイトを使用して、読むんじゃないか? そう思われてしまっているかもしれませんが、 実は、「漫画村」や「zip」「rar」を利用する方法ではないんですね。 と、いうよりも、「漫画村」や「zip」「rar」は、利用したくても、 現在ほとんど利用することができない状態なんですよ。 なぜなら….. 『まちカドまぞく 5巻』を無料読破の神様・漫画村で 読めない理由 『まちカドまぞく 5巻』を「漫画村」で読めない理由….. それは単純に、あなたもご存知の通り、漫画村は現在、 完全にサイトが廃止されているからです。 漫画村は、その圧倒的違法性から、ネット上で大きく話題になっていたり、国がかりでコテンパンにされたりと、2018年4月11日には、もう跡形もなく消え去ってしまったわけなんですよ。。。 (笑) そこで、なぜ「zip」や「rar」では、『まちカドまぞく 5巻』を無料で読むことができないのかといいますと、 ・ 「zip」や「rar」は圧縮されているファイルだから解凍しなくてはいけない ・ スマホには、解凍ソフトが入っていない という究極の2つの条件が揃ってしまったからです。 ですので単純に、「zip」や「rar」では、『まちカドまぞく 5巻』を絶対に無料で読むことができない、というわけですね。 電子書籍・漫画好きからしたら、悲しい現実ですよね…….。 『まちカドまぞく 5巻』を完全無料で読む方法は、令和現在になっても普通に存在するので。 そこで、….. あなたは、ゆで卵を作ることができますか? ………… …….. んっ?……私ですか……….. ? …………….. 私はもちろん作れませんけど。 おそらく、今の心境としましては、 ………. そこで、そろそろ鬱陶しく感じられてきてしまうのではないかと思いますので、早速、『まちカドまぞく 5巻』を完全無料で読む方法についてご紹介させていただきますと、 それは……. あの有名なフジテレビが運営する電子書籍・動画配信サービスであり、 アニメや 映画、 ドラマの新作・旧作合わせて 3万作品。 さらに、今回のメインである、 電子書籍が 約20万冊という超膨大な作品が配信されている、 …….. …………………….. 『』 というサイトを利用するだけです。 そこで、 「でも、アカウントを取得したり、サービスを利用するには、お金がかかるんじゃないの?」 と、よく思われがちなことなのですが、そのご心配は無用です。 本来ありえませんが(笑) しかし、そこがフジテレビが運営するサービスの実力なのでしょうね。 そこで上記のサービスについて、もう少し詳しく解説させていただきますと、『 31日間無料キャンペーン』では、30秒ほどで出来てしまう簡単なアカウント作成後、 本サービスと同じように、 アニメ・映画・ドラマ等、3万作品以上、 電子書籍20万冊以上の中から、好きな作品を楽しむことができるんですよ。 ………………….. もう、意味分からんくらいのサービス内容ですよね。。。 そして、 FODプレミアムは Amazonアカウントを使い会員登録することによって1ヶ月無料で体験できます。 ちなみにアニメに至っては、もうほとんどの日本アニメが配信されているのにも関わらず、完全無料で楽しむことができますので、非常におすすめです。 半端ないです。

次の